新型コロナウイルス入院待機者への訪問看護について藤田愛さんインタビュー

2021年5月 新型コロナウィルスの第4波が猛威を奮っている中、兵庫県神戸市にある北須磨訪問看護・リハビリセンターの藤田愛さんは入院待機者に対しての訪問看護師としてサポートを行っている。5月中旬現在、すでに50名に対し300回ほどの入院待機者への看護を提供している藤田愛さんへ、入院待機者への訪問看護実践についてインタビューを行った。

この記事における「入院待機者」は「自宅療養者」と定義が異なる。新型コロナウィルスのPCR検査が陽性でも症状がなく自宅待機を要請された方を自宅療養者と定義するなら、入院待機者とは「症状があり入院を要するが入院できる先がなく、仕方なく自宅等で待機しなくてはならない方」である。症状を有しており重症化した場合は生命のリスクに直結する状況にある方のことである。この時、神戸市では1,800名ほどの入院調整者がいる状況だったという。

藤田愛さんプロフィール
・医療法人社団慈恵会 北須磨訪問看護リハビリセンター 所長
・神戸市看護大学大学院慢性看護学前期博士課程修了 慢性疾患看護専門看護師資格取得
・兵庫県立大学大学院経営研究科(医療マネジメントコース)修了 ヘルスマネジメント修士(専門職)取得

コロナ陽性患者の訪問看護は引き算

ー通常の訪問看護と新型コロナウィルスの入院待機者への訪問で看護実践において異なることは?

「通常の訪問看護は足し算の訪問看護です。いかに満足してもらうか、いかに充実するかといったように非常に努力していますよね。でも、コロナ陽性患者の訪問看護は引き算であり、短時間のなかで最低限の優先順位で行います。普段であれば、ケアの途中で足が汚れているからついでの足浴をしておこうか、爪も切っておこうか、といった話でしょう。また本人やご家族の語りをじっくり聞く瞬間も多いでしょう。残念ながらそういったことはできません。15分の中で命に関係するものから順番に対処します。そのような思考の切り替えはPPEの着脱よりも非常に疲れます。いかに最低限を目指すか、何か困っていることがあると介入したくなるところ、いかに背負わない看護にするか。訪問したときに「この薬が合っているんだろうか?」と気づくどころか、何の薬を飲んでいるかも知らない程度でも命を救うために関わるというイメージです。」

ー超急性期に近い看護展開のような印象ですね。藤田さんが現場に入ったときに看護問題として焦点を当てていることはなんでしょうか?

「保健所と何を観察するかという項目は決めてその記録用紙があります。体温、酸素飽和度、顔色、唇の色、痰やせき、息が荒くなった等、いわゆる新型コロナウイルスの症状の観察について並べられています。これに加えて私なりに観察しているポイントが他にもあります。保健師さんが訪問したときは安静時しか酸素飽和度を取っていなかったケースで。保健師さんから、落ち着いている人だと言われ訪問をはじめました。実際に訪問をしてみると、確かに安静時の酸素飽和度は98%でした。訪問した際ベッドから歩いてきてくれたときに息が上がっていました。すかさず測ったところ80%台でした。そのような経験から、安静時と少しの労作時の両方の呼吸数と酸素飽和度を見なければ悪化は見抜けないと痛感しました。ちなみに保健師さんは直接訪問ではなく電話訪問がメインです。患者は自分が悪くなっていると怖い気持ちがあります。患者が“いかに悪くないと思ってもらえるように”保健師さんに伝えようとする、それは人間の自然な反応でもあります。訪問ではそれも踏まえて観察するわけです。

他には、食事を食べられない、食事量は何%か、といった記録項目があるのですが、それはそもそも何に対してかというところがあり『発症前と比べて』といったように基準を作らないと分かりませんので、それを基準に観察することにしています。

さらにもう一つは水分量です。対象の方は高齢者や障害者が多いため、細かい数字は聞きません、私は「500ml飲めているかどうか」を確認しています。それが命の線かなと判断しました。「500ml以上か500ml以下か?」というだけの質問です。

でもそれだけでなく、数字上は正常でも、実際はご飯をそれほど食べてないなど、何か変だなと感じることがあるでしょう。その『何か変だな』というのは、どこから感じているのか5秒程度で考えながら、その違和感を確認する過程を毎回の観察項目に自分で足しています」

ーこれまでの150例の中でよく目にした変化として『何か変だな』というのはどのようなものが多かったでしょうか?

「例えば、認知症をお持ちの方などだと、自覚症状も出づらいのです。数字が正常でも、“この人は来るな”と感じると次の日に大きく病態が悪化するケースもあります。小さな所作、そぶりを確認します。今日は少しおしゃべりすぎだ、といった変化や、あるいは表情の変化などがあります。認知症をお持ちの方は自覚症状が見えなくても、数字になって出てきたときにはすでに対応が遅くなってしまっている場合が多いのです。」

ー藤田さんの中で、認知機能が低下している状態にある方の場合、警戒度を上げているということですか?

「そうです。黄色信号で見ています。観察項目における数字が示すものが青信号でも、必ずサインを送っています。落ち着きがない場合や、表情が少し違うのではないか、しゃべるボリュームが高い、落ち着きのなさを感じる等といった気付きです。食欲や食事の量もかなり重要な点です。そういった言葉やレポートに載せるほどにならない小さな違和感も確認し、『来るかも』という目で見るようにしています。」

ー通常の訪問看護であれば、日常的にその方を知っているからこそ気付けるという訪問看護師の鋭さがあると思いますが、藤田さんのお話は、数日前からの関わりです。それに気付けるのは、私にとって非常に高度なように思えます。

「初めてましてで見抜かないといけない場合もあります。初回に感じた違和感は、自分の中でとどめて、他の違和感や変化と情報を結びつけていく作業を短時間の中でします。そのためにはその時初めて出会った患者と短い時間の中で一気にこちらに「開いて」もらわないと駄目なのです。

言葉遣いの点でも、普段であれば丁寧な言葉遣いをしますが、通常ならばしないような『お母さん』、『お父さん』といった呼び方も、その方が「開いて」もらえる言葉であれば、使っていきます。「ねえねえ、お父さん」などと言います。こちらはマスクもしているので長い敬語を使おうと思うと苦しくなる上、伝わりません。「何しとったん?」など、非常に短い言葉で質問をするようにして、心の開き具合を見ます。会話の中で、そこにある言葉遣いのようなものを見ます。15分しかないので、「お父さん」「ちょっと何しとったん?」と言ってみる人もいれば、少し離れたところにいるほうが話してくれる場合は、そのようにします。その人が可能な限り自由に話してもらえるように、それがどのような言葉なのか、どのような話題なのかといったところをとにかく短い時間で選んでいきます。

ー心を開いてもらう目的は?

「短い時間で可能な限り観察に必要な情報をたくさん出してもらうことと、もう一つは、安心感を届ける目的があります。新型コロナウイルス感染患者は恐怖に満ちています。救急車で運ばれる、医者が来ないなどといった恐怖もあります。上品な訪問看護で行くと、出てくる話題は上品な内容にとどまります。「どないしとったんよ、もう」と話せば、奥様から「もうお父さんね実は4日前から〜」「私、自分がトイレするときお父さん廊下でもたもたして、どけながら行ってん」など重要なエピソードがでてきます。その雑談に含まれる情報が非常に多いのです。そのためにも高度な敬語は使いません、そして時間もありません。安心感を提供するために、その雑談の中から何がこの人たちの心をほっとさせる言葉なのか?態度なのか?を探します。「腰いとうておしっこにも行かれへんで。みじめやわあ」と言えば、まず陰部洗浄を考えます。そのような手掛かりが雑談の中にあるので、私は普段は呼びませんが、「お父さん」と夫婦が呼んでいるならば、その流れに乗り、私も「お父さん」と呼んで話し、観察と安心の両立をごく短時間で介入していきます。」

ー対象者の人と一緒の取り組むということ

「患者さんも、病院に入院できない事態や医者も来ないといった事態は初めてです。なぜこれほど調子が悪いのにもかかわらず入院させてくれないのか、看護師は対応してくれるのではないかと聞かれます。「今、私たちもどうすることもできないため、一緒にできることはして、一緒に戦う人になってもらわないと立ち行かない」という旨をしっかりと伝えます。人間ですから、そうは言ってても本当は入院できるのではないか?等、いろいろと皆さんおっしゃいます。それが当たり前の世の中だったからです。「残念ながらできません」と真剣に伝え続けます。おおむね2日程度で、同居の家族の場合だとトーンが落ちてきて、ようやくバイタルを測ってくれるなど協力してくれるようになります。同じ土俵で一緒に頑張るということが重要です。割と大変なのは県外に住んでいるご家族へ今の神戸は入院できないと理解してもらうのに時間を要します。

15分で最低で最高の看護をするには、患者さん側に協力をえなくてはできません。マスクの装着、2点換気、体温測定、血圧を測る必要がある人は血圧測定、そしてパルスオキシメーターを測ってもらいます。可能ならば安静時とトイレ等から帰ってきたときの両方を測ってもらいます。訪問先に行ったときに、わざわざ体調の悪い人を歩かせて測るのは難しいため、生活の中のついでに測定してもらいます。パルスオキシメーターには脈拍も出ます。そこだけは観察を先にしてもらえば、5分が節約できます。認知症を持つ方であれば、現場での測定になってしまいますが、できる方はセルフで測定してもらい、一緒にやるということを意識してもらいます。担い手と担われる人といった訪問看護の立ち位置とは異なり、自宅療養の非常に厳しい状況を一緒の土俵に上がって頑張ろう、私ができることを頑張る、あなたもできることをしてくださいというイメージです。その切り替えが必要です。

 基本的に使えるリソースがある場合は、家族も含めて巻き込んでいきます。中には、「私、家族と折り合い悪いねん」と言う人も出てきます。「けんかしてるから」と言うのですが、それは平和な時代の話です。「そうですか。この機会に仲直りしてください。いつもは仲が悪いかもしれませんが、今は生きるか死ぬかがかかっています。ご協力お願いします」と愛を込めてでもきっぱり言います。そこを遠慮気味に言ってしまうと、通常の訪問看護のモードになり、危機であることが伝わらないのです。新型コロナウイルスに感染したら、生きるか死ぬかです。きっぱり言います。そのように伝えると、患者さん側も覚悟ができてきます。自分の置かれた状況を理解してくださいます。仕事だから何とかと言っても、「そうですか。その帰りに寄ってください」といった感じでご家族にも、分かった上で遠慮はしないというイメージでしょうか。いつもと違うという意識をこちら側が持っていないと、一緒の戦えないのです。

少しの失敗が絶対ではないという心構えが重要

ー実際に訪問に入るときの感染対策の心得やポイントは?

「とにかく少しぐらい手順を間違えても慌てないということです。帰るときに手をきれいにして帰ればいいのです。少しの失敗が絶対ではないという心構えが重要です。焦らないことが何よりです。例えば家にはのれんがかかっていることがありますね、布のものならば最初に入ったときにレンジの後ろに引っ掛けておくなどしています。1回、疲れ果ててのれんの存在を忘れていて最後に当たったことがありました。他には、帰ろうと思ったときに、貴重な清潔ゾーンだったところに、認知症をお持ちのご本人ががそこへ正座している場合もありました。他にも家族全員が陽性だけども小さい子どもが来て、「看護師さん、これ保育園で作ってん」と言ってチョコバナナか何かをその上にきれいに置いてくれることもあります。気を使われて座布団を出され清潔ゾーンがつぶれる場合もあります。そのように考えると、清潔ゾーンが最後まで清潔ゾーンかというとそうとも限らず、清潔ゾーンや自分のどこかが汚れたとしても、最後に綺麗になればよいのです。焦らないことが何より重要です。

ー訪問時のPPE着脱についての気づきやポイントを教えてください。

PPEセットを1回訪問ずつで作っています。中身は使う順番に入っていて、まず清潔ゾーンを作るビニールがあり、次はガウン、手袋、キャップ、フェイスシールド、シューズキャップ、一番最後に替えるサージカルマスクです。個人的なポイントは、ガウンを着る前に「お守り手袋」をすることです。「アンダー手袋」とも言っています。

いくつか迷ったことがあります。例えばアルコール消毒。アンダー手袋だけで中にアルコール消毒を持って入り毎回アルコールで消毒する組と、アンダー手袋の上に手袋を1枚する人と、3枚する人がいました。まず、1枚のアンダー手袋でアルコール消毒をたびたびするという方法ですが、プラスチック手袋の上からアルコールをかえてもびしょびしょのままです。あれは乾いていませんのでそもそも消毒になっていません。何回も消毒する時間ももったいない。持っていったアルコール消毒がありますが持って出るときに、意外と凹凸等があり、それを触るときもそれなりに抵抗感があります。なので、私はアンダー手袋の上に1枚手袋をすることとしています。ガウンの上から袖を隠して、中でケアがいろいろとあるような人がもう一枚といったイメージです。基本的に手袋は2枚です。家に入ったら、その手袋で消毒はせずに、汚れればそれを外すという方法が私はいいのではないかと考えています。ちなみに私個人は3枚重ねにしていますが少しおっちょこちょいで、なにか触った後にこちらを触るといったことをしてしまい混乱するのが理由です。恐らく最もシンプルなのが2枚です。ケアで必要であれば追加するといったかたちでいいと思います。

 次にヘアキャップです。鏡がないため、ショートカットでも一部髪の毛が出ていたり、前髪が少しこぼれていたりします。最初は使い捨ての鏡などを持ち込んでいましたが、それもまた余分な項目が一つ増えるため、普段練習しておいて装着できるようにしておくとよいでしょう。別に3本程度、髪がこぼれていても、手術室ではあるまいしといったイメージです。もちろん者の家に鏡があれば、漏れなく使わせてもらっています。

 シューズカバーについてはかなり悩みましたが、するほうがいいだろうと思っています。ちょうど昨日の訪問で、シューズカバーをしていない足で何かを踏みました。なのでシューズカバーはあっていいかなと思います。なお、ぺしゃぺしゃのスリッパは、最後、手ですくい取らないと足が入らなくなることがありますよね。どちらかというと、シューズカバーのほうがいいと思っています。なお、20-30代の方と40代、50代の体幹のバランスは違います。私らくらいになると片足立ちになったときに支えなければいけません。どこかを持ってないと立つのが難しく、体幹を鍛える必要があります。シューズカバーをする際は、動画のように片足をきれいに上げてすんなり履けるものではないため、どこかに手を置いて触ってしまいます。バランスが崩れそうになるならば、どこを持つか決めておくとよいでしょう。

ー訪問にいくときの持ち物は?

「私は、かばんの中からiPadとスマートフォン、車の鍵、財布などの他に、コロナ患者を何人も訪問するので保健所の作った票が入っています。普通のレジ袋に最初から詰めて持っていきます。1回の訪問につき一つです。街を歩いていても自然に見えます。入れているものは、iPad、スマートフォン、車の鍵、財布、紙の資料も必要ならそこに入れて持っていきます。特に私は車に置けないものを持ちそれ以外は全て車に置きます。ポケットにはアルコール消毒を入れ、片方にはシャリシャリの小さい袋を入れています。サージカルマスクは自宅の中で外してきてもいいのですが、明らかに空気がこもっている家もありますよね。そのようなときは、サージカルマスクを外に出てから外したくなります。基本は持ち帰らずそこで捨てていき、使用済みのお守り手袋とサージカルマスクだけはポケットのシャリシャリ小袋に入れて、持ち帰りのごみとします。」

ーバイタルグッズはなにを必要としますか?

体温計とパルスオキシメーターだけです。それもできれば保健所もしくは患者に用意をお願いしています。たとえばマンシェットの付いた血圧計も使いましたが、ゴムの所が消毒しづらい面があります。それを持つときはグローブをして消毒してますが、今度、きれいになったときに、手袋でどちらが不潔か清潔か分からなくなりがち。そもそも現在は基本的に血圧を測りません。ただ、中には血圧の推移を見たい人もいます。血圧を測るにしても、血圧計は安いですよね。利用者に血圧計を買ってもらいたいのです。

パルスオキシメーターは保健師がスクリーニングの調査に行ったときに置いてくることが基本ですが、自分でモニタリングできない人にはパルスオキシメーターをそもそも置いてきていません。実はそれは後で分かりました。その場合は自分らで持っていかなければいけません。いわゆる持ち込む用コロナセットを5セットほど準備していました。手首血圧計、体温計、パルスオキシメーターで、その期間は患者の家に置いておきます。認知症の方だと体温計もどこに置いたか分からなくなることもよくあるため、このような対応を取っています。

聴診器は、耳に直接触れるもので清潔に消毒を操作することも難しいです。コロナの急性期においては呼吸回数とパルスオキシメーターです。肺雑音や心雑音を聴取する以前に、聴診器に代わり訪問看護師は、他の観察で十分により早くキャッチできます。そのような理由で、聴診器は要らないという判断をしています。」

ー記録はどうしてますか?

「記録に関する考え方は転換が必要です。それほど細かに覚えておかないものはないため、何も持ち込まないよう車に乗ってから記憶のある範囲で書きます。サチュレーションが非常に悪かったかどうかなど、そのようなレベルなので、何も持っていきません。

最初は紙に書いて、最後に写真を撮って帰ろうとしたこともありましたが、中には玄関が暗闇の家もありフェイスシールドが曇っているなどすると分からなくなります。その方法は諦めました。音声で事務所へ送る方法も試しました。11時から訪問に行くとき私がスピーカーフォンにして観察していくので事務さんにお願いしてそちらへ入力してくれという方法です。その方法は事務員も手が止まってしまい、いまいちなものでした。

次に録音をしようと思いました。スマートフォンで最初から録音機能をオンにしておいて、胸ポケットに入れていました。ガウンを着た後で録音のスイッチを押すのを忘れました。録音したあとそれを聞く15分という時間がどこにあるのか?といった点もありました。このようないろいろな方法を試した結果、記憶の範囲で記録するという方法がいいのではないかと思うに至っています。別に、36度4分でも36度5分でもどちらでもいいでしょう。37度5分と36度5分を間違えるとまずいですが、大体はそのような感じです。血圧も2ほど異なっても、110の60でいいのではないかと考え、記録媒体は持ち込まずに、車の中や外に出てすぐメモをするようにしています。それでいいと思います。iPadやスマートフォンも手袋をして袋に入っていると反応しません。タッチペンを使おうと考えても、ミスが出そうで余計破綻します。とにかくシンプルな工程であることの重要度が高いです。

ー終わったあとユニフォームの着替えなどはされていますか?

「男性の看護師も多いのですが、その人たちは車で上手に着替えています。女性スタッフだと、事務所の着替え室で着替えています。車はそのまま乗ります。私は1日中コロナ対応なので、1日が終わったときにアルコールを噴霧しますが、それもどこまで効果があるのか疑問です。訪問中に正座や座るときはおおむねズボンの前が汚れて、後ろは汚れません。お尻ごと座るときというと椅子に座るタイミングがありえますが、布と布の接触であり、そのような椅子や足元は基本的にグレーゾーンのような扱いにしています。ただ、コロナ対応の訪問をしたあと通常の訪問にいく場合にはユニフォームも着替えていくようにしています。」

ー訪問のスケジュールや順番には気をつけたりしていますか?

「コロナ対応の日は他の通常の訪問看護、定期のものは行かないのか、期間を空けて通常訪問にも参加するのか、あるいは同じ日にOKにするのか、質問も多いです。はじめはコロナ対応と通常訪問は完全に分けていました。でも本当にコロナ対応ばかり行くと、コロナと分からずに訪問している人も多数でてきました。それよりはむしろフル対応しているだけはるかにマシで、厳格に防御して消毒もしているため、去年のような事務所へ寄ったらいけないというふうに思っていたときとは全く異なります。きっちりやることで濃厚接触者になりません。PPEきて、消毒して、車や事務所で着替えて、靴下を替えれば感染リスクは低いものです。基本的に自分は感染しないつもりで訪問しています。他の訪問もいくし、事務所に寄るのも全く問題にしていません。一点お伝えしたいのは、他の訪問と同日に行くならば私はキャップを絶対にするべきだと考えています。私自身で実際に普段の髪を触る回数を数えてみたところ無意識に少なくとも20回は触っていましたので、在宅ではキャップをするべきと思っています。

コロナ対応は1日の最後の訪問にするのはいい考えだと思います。ただ前日に酸素飽和土が89%で、酸素を入れたが認知症なので酸素を外している可能性もあった時など朝一で観察しに訪問しにいきたいわけです。夕方に配置することがが難しいこともあることがわかります。」

最後に綺麗になって持ち込まない・感染しないがゴール

ー藤田さんが見つけたさらなる工夫、キラーフレーズ

「コロナ患者の対応の場合、急患等が入ったときに困るため時間はそこまで厳格に約束しないのがこつだと思います。特に約束したとしても遅れてしまったときに非常に焦ってしまい忘れ物や手元の動きが悪くなり感染対策上のリスクが跳ね上がります。焦らないことが重要だからです。通常訪問のように、11時に行く、10分前後遅れる場合は連絡しますね、といった約束ではなく午前か午後かといった程度です。患者は絶対に家にいるからです。できそうなら15時から17時の間など2時間ほどの幅でよいです。そのように大きな枠にしておくほうが慌てなくて済みます。

そして前の家から向かうタイミングで電話して、2回目以降は、「いつもの(バイタルサイン測定、換気、マスクなど)お願いしますね」と言って協力してもらいます。メモに取っておいてくれと言う場合もあります。

訪問前に換気しといてもらう旨は伝えていますがワンルームで窓が1カ所しかない家もありますよね。一つしか窓がない部屋でドワを開けると一瞬風が流れますよね。そのときにまともにその風を受けないよう逃してから入ることにしています。入っても締め切らずに開けておきます。ドアストッパーがなければ「ごめん。靴貸して」と言って人の靴を借りることも。

訪問すると、家の人が玄関で待ってくれます。帰りはお見送りへ行こうと思って非常に接近づいてくださいます。申し訳ないけども清潔ゾーンのこともあり、どのようにして市膳にそこから離れてもらうかという悩みがあります。できれば傷つけないようにお伝えしたい。「私、今から少し時間をかけてお着替えをさせていただきます」、「ちょっと時間をかけてゆっくり着替えたいので、どうぞ奥に待っててくださいね」と言うと、その『着替え』のキーワードでみなさん離れてくれます。これはほぼ100%成功しています。案内するために中へ通そうとしてくれますが「申し訳ない。今から私、慌てずにゆっくり着替えたいので」と言うと、皆さんは、「あ、着替え」と言うので、これはいい言葉だと思います。帰りも同様です。お見送りしようとしてくれるので、近いなと思いつつも、「今から帰りの着替えがあるのでどうぞ奥で。帰るときにまたお声掛けさせていただくので、どうぞ。ゆっくり着替えたいので」と言うと、非常にスムーズにいきます。ぜひ使ってください。

ーこれほどの量の訪問をしているからこそ思えた、重要なこと

「繰り返しますが、工程があまりに数多くありすぎると、大事なところが抜ける恐れがあります。そぎ落とし最低限の工程にするほうが、絶対的なマスクや手指消毒などに集中できます。これまで色々試しましたが工程を増やせば増やすだけ、マスクの仕方がずれるなど他がおろそかになるのが分かりました。理想的に言えば数多くの工程で完璧な感染対策をしたいのですが、それを捨ててそぎ落とし確実に重要な部分のみ残すことが重要です。グレーなことにこだわりすぎず、最後に綺麗になって持ち込まない・感染しないがゴールです。

そして、15分は短い。はじめは「時間が足りない」ということで延長せざる得なくなっていましたがそれは平時の「足し算の訪問看護」をやろうとしていたからですね。「15分でも、自分たちが行く時点で満点なのだ」と思えばいい。非常にリスクもある中訪問するわけですから。そのように自分を称賛していないと訪問時に加点を求めたくなる。自分たちが行く時点で満点だという話は、利用者側にもそのように理解してもらう必要があります。だから、こちらもそれほど謙遜せず、看護師の数が非常に少ないことも理解してもらい、つまり協力してもらいたいということをちゃんと伝えます。15分は、利用者側も一緒にチームになってくれるかどうかで大きく変わります。着いてから「体温計はどこやったっけ」といった感じになると、一気にそこで5分が浪費されます。同じ土俵で一緒に戦うといったところを私たちが認識しておかないといけません。その結果、健康観察に協力してくれて、5分で終わる人も中にはいます。

ただ中には訪問してみたら倒れていた、など1時間程度かかってしまう場合もありました。それはその場でもう一人読んで、2人で行って30分にするほうがよかったでしょう。30分以上かかりそうならば、2人訪問をして、何とかそこのやりくりをするほうが必ずよいです。ケアが必要な人では「15分」という時間は絶対ではありません。おむつ交換などでも体が全く動かない人もいます。30分以上かかりそうなケアが必須な場合は、2人で行き最長30分でやり切っていくことがよいでしょう。それも、「最低限の最高を目指す」ことでもあると思います」

 

後編へ続く

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